今、企業が求める人材の条件は何でしょうか?

学生に聞くと、「コミュニケーション能力」や「問題提起、問題解決能力」と答えることが多いです。しかし、それでも就職活動がうまくいかないのはなぜでしょうか。

その理由の一つは、面接で面接官の気持ちを読み取れず、話がうまくかみ合わないためです。相手と向き合い、相手の心を理解し、それに対して自分の気持ちをどう伝えるかが重要です。

就職活動は、自分を企業に売り込むための商談のようなものです。事前に用意した問答集をただ読み上げるだけでは、面接官の心は動きません。その場その場の状況に応じた対応が求められます。アドリブで自分の本音を伝えることが大切です。

自己分析

自己分析は心に刻まれたエピソード

自己分析を難しく捉えすぎていませんか?

自己分析は就職活動の一環です。論文にまとめるわけではないので、気楽に取り組んでみてください。

まず、「就職活動は商談である」という前提に立ってください。自分という貴重な商品を企業に買ってもらうのです。

納得できる企業に買ってもらうためには、商品価値の提示が必要です。この商品価値の発見こそ、自己分析です。

これまでの人生で、心に深く刻まれた出来事、感動したこと、思わぬ好結果に喜んだことなど、記憶に残るエピソードがたくさんあるはずです。

これらのエピソードは自分そのものであり、自分を理解してもらうための貴重な商品価値です。思い出すままにメモしておきましょう。

現在、企業は「コミュニケーション能力」や「自己啓発能力」を求めています。自分の商品価値の中からこれらの能力を感じさせるエピソードを選び、人事担当者に伝えて「一緒に働きたい」と思わせることが、就職活動(商談)です。このベースになるエピソード探しが自己分析と捉えて大丈夫です。

自己PRは自分の素顔を見せること

企業が求めているのは学生の素顔

企業は、自慢話を聞きたいわけではなく、学生の素顔を知りたいのです。どのようなことに心が動かされ、どのような取り組みに頑張ることができるのか、生の姿を見たいのです。自分の気持ちを自分の言葉で語れば良いのです。

その際に気をつけたいのは、あれこれ盛り込みすぎないことです。あれも語りたい、これも知ってもらいたいと盛り込みすぎると、内容が表面的になり、行動レポートに終わってしまいがちです。整理して一つの材料を深く掘り下げるのが秘訣です。

企業が求めているものが何であるかをしっかり把握し、それに応えることが大切です。企業があなたの人柄を求めているのであれば、それを象徴するエピソードを使って「私はこういう学生です」とアピールすれば良いのです。また、物事の取り組み方を求めているのであれば、「私はこういう取り組みができます」と、自分の商品価値の中から分かりやすい事例を使って本質を伝えることが重要です。

これが、企業をその気にさせる自己PRの方法です。

OB訪問・OG訪問

企業研究の重要性とOB・OG訪問のすすめ

企業研究をする際、多くの人が手持ちの資料で判断することが多いと思います。活字情報や映像で業態や経営戦略の概略はつかめるかもしれませんが、企業の風土や社員がどのように仕事と関わっているかは完全には理解できません。それを感じ取るためには、実際に働いている人を通して知るしかありません。

就職はアルバイトとは違い、雰囲気が合わないからといってすぐに辞めるわけにはいきません。我慢して働いているとストレスが溜まり、仕事の能率も低下してしまいます。これは自分一人の問題ではなく、周囲にも迷惑をかけることになります。若年層の早期退職者の大半は、相性のミスマッチからやむなく転職していった人たちです。気持ちよく働くためにも、OB・OG訪問は欠かせません。

先輩の話には主観が入りがちで、一人だけの意見では「こんなはずじゃなかった」と後悔することになるかもしれません。できるだけ多くの先輩に会い、共通の話を聞くことがその企業の実態を知る手助けになります。

志望企業にゼミやサークルの先輩がいない場合でも、高校や大学の先輩、親戚、近所のお兄さんお姉さんなど、周囲を見渡してみましょう。これでも見つからない場合は、志望企業の近くに行き、直接社員に声をかけて理由を話し、協力をお願いするくらいの積極性が必要です。

少子化時代の純粋培養世代の弱点として、お膳立てされることに慣れ、つまずくとすぐ助けを求める傾向があります。しかし、真面目にコツコツやるだけでは評価されません。自分で考え、判断し、行動できる人しか企業は求めていません。受け身から脱皮し、行動派へと変身してほしいと思います。

企業研究について:セミナーは相性占い

就職活動の中で、セミナーの役割は非常に大きいです。企業説明を受けるだけなら、資料を読むなり、インターネットのホームページから情報を得ることができるでしょう。しかし、本来の目的は、自分との相性の確認です。企業訪問をしなければ、その企業の風土を肌で感じることはできません。微妙なニュアンスは、実際に足を踏み入れなければ伝わってこないものです。

この風土が自分に合うかどうかは見過ごされがちですが、今後の生活にまで影響する重要なポイントです。相性を軽視して企業の規模や人気度だけで選んだ場合、風土が合えば問題ないですが、合わなかったときは悲劇です。我慢して出社しても限界があります。ストレスが溜まり、仕事への意欲が薄れ、能率が落ち、病気を引き起こすことにもなります。

企業社会はチームワークで動いています。自分一人の問題では済まされず、周囲にも迷惑をかけることになります。若者の早期退職の主要因のひとつが、この相性のミスマッチです。セミナーでは、職場環境や人間関係を詳しく観察することが大切です。

企業の風土や雰囲気を感じ取り、自分に合うかどうかを確認するためにも、セミナーを積極的に活用してください。

合同会社説明会の活用

複数の企業が一堂に会して会社説明会を行うことを、一般的に「合同会社説明会(合説)」と呼びます。大きな会場をブース(こまかく間仕切りしたコーナー)に分け、一時的に各企業の人事部の出張所ができると思えば良いでしょう。会場への入退場は自由なので、自分の都合に合わせて好きな時に参加できます。

個別企業セミナーでは単なるセミナーで終わり、後日選考に移ることが多いですが、合説ではセミナーから面接までまとめて行っている企業もあります。個別企業セミナーとは異なり、ブースで対応してくれる人たちの大半が採用の決定権を持った方々です。学生のアプローチ次第では、個別面談を設定してもらい、内定まで進むことも珍しくありません。

また、合説には多業種の企業が参加しています。狭いブースではありますが、企業の特色(風土)が出ています。各ブースの雰囲気を感じ取り、整理することで相性の良い業界が浮かび上がってくることがあります。合説は効率よく相性の良い業界を選ぶ場でもあります。

合同会社説明会を上手に活用して、自分に合った企業や業界を見つけましょう。

エントリーシートについて

エントリーシートは自分のカタログ

エントリーシートは何のために記述するのか、今一度考えてみましょう。就職活動の一環として、志望企業に提出する自己紹介書です。その通りですが、記述する際に本来の目的を忘れてどうまとめるかに夢中になってしまうことが多いです。

エントリーシートを通して「私はこういう人間です(学生です)」とアピールすることが重要です。作文的に上手くまとまっていても、自分の特性が霞んでいては意味がありません。ポイントは、自分の「人柄(感性)」や「物事の取り組み方」をどう説明するかです。

これまでの人生で、記憶に残る出来事や心をときめかせた思い出は「人柄」や「物事の取り組み方」を象徴するエピソードです。これらを思い出しながらメモし、整理してみましょう。そして、エントリーシートを記述する際にこれらのエピソードを織り交ぜて説明します。

注意が必要なのは、単にエピソードの説明だけで終わらせないことです。エピソードの背景にある動機や、結果に至るプロセス(結果を導くための工夫や苦心)を合わせて説明することが大切です。そうすることで、相手は行間を汲み取り、あなたの人間像を脳裏に描くことができます。思わず、ピックアップしたくなるはずです。

資格について

資格の取得

資格がないと就けない職業(弁護士、会計士など)を目指す場合、資格取得に全力を傾けるのは当然のことです。しかし、これらの職業は独立性の強い職業です。一般企業に就職する場合、資格は勉学の証しとして評価される程度のものです。エントリーシートなどでいくつもの資格を持っていることをアピールしても、資格コレクターとしか見られないことがあります。資格が仕事を肩代わりしてくれるわけではありません。仕事をするのは自分自身です。

情報関連企業に入社すれば取得義務のある基本情報技術者試験の資格などは、それなりに意味のある資格ではありますが、採用を決める際の加点程度でしかありません。資格に挑戦する時間があるなら、自分自身の中身を磨くことが大切です。

どこまで求められる語学力

人気の高い外資系金融企業で、TOEICのスコアが500点に満たない学生が内定を獲得したケースがあります。内定者の平均スコアが830点前後という中で、非常に低い数値です。それでも内定を獲得したのです。また、ある航空会社ではTOEIC700点で足切りされるという噂がありますが、実際には600点に満たない学生が内定を得た実例もあります。

これらの例からわかるように、語学力だけで逸材を見過ごすことはありません。語学力が直接ビジネスをするわけではなく、ビジネスを後押しするツールに過ぎないことを理解しておくべきです。

とはいえ、今はグローバルスタンダード(世界標準)が求められる時代です。語学力は常識として必要とされています。企業によっては、TOEICのスコアによって筆記テストが免除されることもありますし、エントリーシートに英検やTOEICのスコアを記入させる企業も増えています。恥ずかしくない程度に語学力をレベルアップしておくことが大切です。

就職活動の禁句について

協調性、指導力、行動力、忍耐力、瞬発力・・・こういった言葉が禁句とされることに疑問を持つかもしれません。これらの言葉を裏付ける背景がきちんと説明されていれば問題ありませんが、大半の学生は「サークル活動でチームを盛り上げ好成績に結びつけ、指導力を養った」程度の説明しかしません。

このような説明では、どのような指導が行われたのか、どのような工夫がなされたのかを理解するのが難しいです。人事担当者から「誰と比較して指導力があると思うのですか?」と質問され、頑張りが裏目に出ることもあります。

こういった単語は、本来面接官が面接カードに記入するものです。面接中に細かなメモを取る時間はないため、面接終了後に短評を記入する際の覚えとしてこれらの単語をメモします。

学生は、面接官が咄嗟にメモできるように、エピソードを駆使し、その背景にある自分の気持ちや取り組みを説明することが重要です。これにより、面接官はあなたの本質を理解しやすくなります。

誤解を招く言葉について

無意識に使われる言葉の中に、「優柔不断」というものがあります。長所・短所を聞かれたときに、短所として使うケースが多いです。面接時に話し言葉として「優柔不断」が使われた場合、学生の表情が見えるため、さほど気になりません。しかし、エントリーシートなどで学生の姿が見えない時に「優柔不断」が使われると、その言葉だけが強調されてしまい、「そのような煮え切らない学生は要らない」と判断されることがあります。

同様の言葉として、「無鉄砲な一面」や「あきやすい性格」など、強い先入観を植え付ける言葉があります。これらを使うと、たとえそれを乗り越えて大きく成長しても、一度ついたイメージはなかなか払拭できません。

少し工夫をすれば、プラスの印象に変えることができます。例えば、「私はイノシシみたいに突っ走る」と言うと、面接官は引いてしまい、「社内をかき乱すような学生は採れない」と結論付けられるかもしれません。それを「周囲の状況を見ながら、ここぞという時はイノシシみたいに突っ走れます」と言えば、全く問題ありません。むしろ、頼もしく感じてもらえるかもしれません。

エントリーシートなどでは相手が見えないため、十分に留意することが重要です。

筆記テストについて

基礎能力・性格適性の検査システムとして知られているのがSPIです。インターネットの普及により、採用がオープンになり、応募者数が大幅に増加しました。全員と面談して採用するのが理想ですが、物理的にそれはほぼ不可能です。そのため、各企業では筆記テストやエントリーシートによる書類選考で応募者数を絞り込んでいるのが現状です。これらをクリアしなければ面接に進むことができません。学生にとっては大きなハードルの一つです。

筆記テストの過半数を占めているSPIとはどのようなものでしょうか。SPIは大きく分けて、言語能力(表現力、文章力、言語の理解力を測る)、非言語能力(仕事上必要な数量的な処理能力を測る)、性格適性(職務適応能力を測る)の3つの部分で構成されています。各企業はこれらを自社の求める能力に合わせて選択し、使用しています。内容的には中学生の学習範囲と考えて差し支えありません。6割程度できれば合格できます。

時間の割に問題数が多いため、時間のかかる計算問題などは最初から捨てることが大切です。気分的に余裕を持って取り組めば、さほど苦にはならないはずです。しかし、準備なしで挑むと時間が足りなくなるかもしれません。問題集を一冊、頭の体操くらいの気持ちで目を通しておくと良いでしょう。自分がつまずきやすい問題や引っかかりやすい問題を整理しておくと、気楽に取り組めます。

論作文で求められているものは学生の素顔

論作文といっても、あまり構える必要はありません。原稿用紙を通して「私はこういう人間です」と自己PRすることが目的です。論文募集に応じるわけではなく、就職活動の一環として自分という商品の価値を判断してもらうためのものです。ですから、論文を書くのだと勘違いしないようにしてください。文章の上手い下手は二の次で、論旨が一貫していればそれで十分です。相手企業が求める人材に自分が合うかどうか判断できる材料を提供することが大切です。

論作文は800字程度のものが多いです。課題をストレートに論じるのではなく、一度自分の中で消化してみることをお勧めします。何を題材にすれば課題と接点が出てくるか、心ときめかせた思い出や自分を象徴する実体験などから選び出し、それを材料にまとめ上げると良いでしょう。

800字といえばワンポイントです。材料が豊富だからといって、あれこれ盛り込むと論点が曖昧になります。一番ピッタリのエピソードを使い、その背景まで触れると、読み手の心をくすぐるものになります。

志望動機

戦略・戦術は志望動機につながらない

志望動機が曖昧なために失敗するケースは多いです。具体的に話しているつもりでも、面接などで「君の志望動機は甘いね」と指摘されると、何が足りないのかわからず戸惑ってしまうことがあります。自分では気づかない落とし穴にはまっているのです。

「甘い」と指摘されるケースの大半は、業界への志望動機にはなっていても、志望企業に対する動機が明確でない場合です。「なぜ、この企業を志望しているのか」という気持ちが表現できていないため、どうしてもその企業に入社したいという強い願望が感じられないのです。

ホームページや入社案内を参考にして、戦略や戦術に感銘を受けて、もっともらしくまとめ上げても、抽象的な話にしかなりません。固有名詞を使って、その企業でなければならないというふうに振る舞っても、同業他社も同じような取り組みをしていることが多いです。これでは、他社との差別性がなく、「ライバル企業に行ったらどうですか」と皮肉を言われて終わってしまうこともあります。

志望動機は、その企業ならではの魅力や自分との具体的な関わりを強調することが大切です。しっかりとした理由を持って、志望する企業に対する熱意を伝えましょう。

「好きだ」に勝る動機はない

学生の実務体験がなくても伝えるべきこと

学生は実務体験がないため、業務について話しても説得力に欠けることがあります。その企業に入社して何がやりたいのか(関心がある業務は何か)をきちんと話すことは前提ですが、企業風土や働いている人たちの姿に心を魅了された経験があるなら、その時の気持ちを素直に伝えることが大切です。これほど強い志望動機はありません。

ある銀行で、建物や社内の雰囲気、働く人々など、見るもの触れるものが心を捉え、その気持ちを素直に「好きだ」と伝え続けた結果、変わった女の子だと言われながらも、数少ない女子総合職として内定を獲得した事例があります。

就職活動は交渉事です。相手の心を掴み、相手の懐に入っていかなければ商談は成立しません。理屈だけでは相手の心は開きません。体温を感じるような気持ちをぶつけてこそ、相手は心を開いて受け入れてくれます。これが、OB・OG訪問が強い志望動機に結びつきやすいと言われる理由です。

面接について

面接官の心証に左右される面接

面接では、学生の「人間性」や「思考回路」を見て、自社に合うかどうかを判断しています。人間性では職場の風土に溶け込めるかどうか、思考回路では業務への適性を見極めています。自分の特性を説明するためには、適切なエピソードを使って「私はこういう人間です」とアピールすることが大切です。その際、エピソードをそのまま語るのではなく、そのきっかけやプロセスでどのように工夫したかなど、背景を織り交ぜて説明することがポイントです。

面接が近づくと、誰しもあれこれシミュレーションしてしまいますが、シミュレーションを重ねることで、情報という厚い衣をまとったクローン人間のようになってしまうことがあります。食べ物に例えるなら、ネタが判別できないほど厚い衣をまとった不味そうな天ぷらのようです。余計な衣をそぎ落として、旨そうなネタが顔をのぞかせるパリッと揚がった天ぷらのように、面接官が思わず手を出したくなるようにすることが大切です。

面接では、面接官の心証も大きなポイントです。学生の第一印象で○×△をつけており、面接が進んで○が×になることはあっても、×が○になることはほとんどありません。自信なさげな暗い表情では、当然のように×がついてしまいます。採用選考は生き残りゲームです。厳しいチェックをかいくぐってはい上がってくる人が採用されます。第一印象で×がつけば、その時点で一巻の終わりです。

面接会場に入る前に気持ちを切り替え、「この会社が最高の舞台だ」と自分に言い聞かせ、胸を膨らませて入室しましょう。表情が輝いていれば、面接官も思わず○をつけたくなるものです。

面接の種類

最近の傾向として、初期段階の面接では、一対一の個別面談よりも、集団面接やグループディスカッションを採用している企業が多いです。慣れないと周囲に影響されて失敗することがよくあります。ここでは、集団面接とグループディスカッションについての留意点を述べておきます。

集団面接
集団面接は、数人の学生が一度に面接を受ける形式です。発言の順序によっても異なりますが、最初に論理的に話す学生がいると、自分の話が「稚拙」ではないかと感じ、予定していた話を変更して失敗することがあります。他の人と比較せず、自分の素顔を見せることが大切です。立派な話で採否が決まるわけではありません。また、自分と同じようなエピソードを先に話されて面食らうこともありますが、慌てる必要はありません。エピソードの背景にある自分の気持ちを語ることで、十分に差別化できます。

グループディスカッション
グループディスカッションは、与えられた課題について討論する形式です。話の主導権を握ろうとテンションを上げて発言する学生がいますが、独りよがりに見えてしまいます。面接官は、「周囲の状況を判断した発言ができているか」をチェックしています。また、発言の中に物事に対する取り組み方を判断できる材料があるかどうかも見ています。その上で、グループの意見を吸い上げ、与えられたテーマを結論に導く姿勢があるかどうかも判断の基準にしています。

集団面接やグループディスカッションでは、自分の意見や考えをしっかりと持ち、周囲との調和を図りながら発言することが大切です。

内定辞退について

入社誓約書と内定辞退について

本命企業の結論が出る前に、内定の提示があったらどうしよう、と悩むことは先輩たちも経験してきたことです。まずは、先行している企業が自分にとってどのような企業か改めて考えてみましょう。本命企業に失敗したときに、気持ちを切り替えて気分よく勤められそうな企業であれば、ありがたく内々定を受諾すれば良いです。しかし、「とりあえずもらえるものは」という安易な気持ちで受諾するのは相手に失礼です。

その後、本命企業から内々定が出た場合は、速やかに先に内々定をいただいた企業にお断りの連絡を入れましょう。先方にも採用計画があり、辞退することは相手の計画を狂わせることになります。自分を評価して内々定を出してくれた企業に対して、相手の立場を考え、まだ調整のきく時期に丁重にお断りすることがマナーです。億劫でも直接出向いて、自分のやりたい仕事が見つかったことを誠心誠意説明して納得してもらい、辞退することが大切です。

最近では、内定受諾の際に誓約書を書かせる企業が増えています。特に、保証人連名で押捺するものも少なくありません。これは企業にとって学生を引き止める苦肉の策です。まずは誓約書を提出しましょう。辞退する際には、道義的に責任がありますが、自分の一生の問題です。就業体験のない学生の判断には迷いもあるでしょう。心から頭を下げて謝れば、許してもらえるものです。

インターンシップについて

インターンシップに名を借りた青田刈りについて

近年のインターンシップは、企業の思惑による採用選考の前倒しが大半だといえます。これらのインターンシップに参加した学生だけを別選考し、早々と内定を出すケースもあります。本番に向けて志望企業を絞り込むために、時間を惜しんでOB・OG訪問やセミナー参加と忙しく動き回る貴重な時期です。1週間も2週間も終日の就業体験を実施する大手企業などは、企業エゴの最たるものです。

就業体験のために参加した学生に「内定」をちらつかせ、他社を断念させる企業まで現れる始末です。本末転倒も甚だしいです。企業の思惑で学生が振り回されるのは避けたいところです。そのあたりをしっかり見極めて、納得のいく就業体験にしていただきたいものです。

将来設計の「羅針盤」に!

現状では、インターンシップに参加した学生を本選考で優位に扱う企業もあり、学生を戸惑わせています。本来のインターンシップは、実務経験のない学生が学業を終えるにあたって、人生観や職業観を養うための就業体験です。たまたまその企業が気に入って志望することはあるかもしれませんが、就業体験する企業への就職を目指すためにインターンシップに参加するというのは本来の趣旨とは異なります。

当然のことながら、実務を体験して企業社会には向かないと判断し、大学院への進学など異なる道を選択するのも一つの生き方です。入社までに自分の生き方を模索したり、じっくり職業について考える機会としてインターンシップに参加することは賛成です。

大手企業の組織、中小企業の経営戦略、ベンチャー企業の視点、それぞれに得るものは大きいです。その上で、自分の生き方に合った職業を見極め、その仕事のできるフィールドを求めて就職活動に移るというのが理想的な進め方でしょう。

総合職と一般職

崩れた総合職・一般職の壁

総合職を目指すべきか、一般職に切り替えるべきか、女子学生の悩みは尽きません。女性活用の機運が高まり、女性が総合職に進出するにつれて、男性と同等に働ける総合職というイメージが定着し、一般職は取り残された感がありました。

企業はビジネス活動を通じて収益を上げ、社員に還元しています。一般職といえども、役割分担の中で無駄を省き、業務の効率化を図ることが求められています。つまり、総合職同様にビジネス活動の一端を担っているという自覚が必要です。

総合職でなくても、本人の能力と意欲によって十分に脚光を浴びることができる環境も整ってきました。大手銀行では女性の支店長が誕生しています。しかも、総合職以外の支店長です。このような事例は、総合職や一般職という区別にこだわる前に、どう仕事に取り組むかが重要であることを示しています。

総合職と一般職の最新の状況

総合職は、将来の幹部候補として、様々な部署を経験し、幅広い業務を担当します。ジョブローテーションを通じて、経営企画、営業、人事など、多岐にわたるキャリアパスを歩むことが可能です。

一般職は、特定の部署で専門的な業務を担当します。事務職や営業事務などが代表的です。一般的には、ジョブローテーションはあまりなく、特定の分野でのスキルを深めていくキャリアパスが一般的です。

ただし、近年では、この総合職と一般職の区別をなくし、「総合職」として一本化する企業も増えています。これは、多様な人材を活用し、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出すためです。また、女性活躍推進の観点からも、総合職への一本化が進んでいます。

一方で、一部の企業では依然として総合職と一般職の区別が存在しています。このため、就職活動の際には、企業の採用情報や説明会などで最新の状況を確認することをおすすめします。企業ごとの方針や制度を理解し、自分に合ったキャリアパスを選択することが大切です。

一般職経由総合職

就職活動で、男子学生に伍して総合職への内定獲得は想像以上に厳しい道のりである。まだまだ日本企業は男社会で、理不尽な採用選考が行なわれているケースが多い。報われない努力で神経をすり減らすことはなかろう。

総合職一本の熱意は買うが、物事には絶対がない。柔軟に捉えていろいろな選択肢を検討したいものである。

一般職で入社した後、総合職への気持ちが断ち切れないというのであれば職種の転換制度を活用すればいい。

女子学生の最大の受け皿である金融関連、とくに銀行では転換制度を活用している女性が続出している。

一般職から総合職への転換は、いまや、キャリアを捨てきれない女性の夢を実現するバイパスになっている。

リクルートスーツについて

リクルートスーツはビジネススーツ

就職活動における服装について、ガイダンスなどで「面接は公式の場であり、パンツスーツは避けるべきだ」と説明を受けると、戸惑ってしまうことがあります。確かに、面接は公式の場ですが、同時に商談の場でもあります。商談は交渉の場であり、ビジネスにおける戦場とも言えます。そう考えると、自分が戦いやすい服装が最適です。相手に不快感を与えない限り、問題はありません。

ブラウスにスカートやガクランでも問題はないですが、目立つ服装は面接で服装についての話題に発展しがちです。限られた時間を有効に使うためには、一般的なリクルートスーツを選択するのが無難です。服装で目立つよりも、中身で目立つ方が得策です。

パンツスーツでもスカートでも構いませんし、男子学生の場合も、二つ釦でも三つ釦でも問題ありません。デパートなどで陳列されている中から、自分の好みの一着を選べば良いのです。リクルートスーツは、ビジネススーツとしての基本を押さえた装いであれば、十分に対応できます。

面接官が気になる装い

面接官が一番気にするのは清潔感です。他人に気配りができ、意欲的な学生であっても、スーツの袖口から薄汚れたシャツの袖がのぞいていると興ざめしてしまいます。「足下を見る」という諺がありますが、入室前に靴の埃を払うだけの注意ができれば、他のことにも神経が行き届くであろうと面接官は感じます。

面接中、面接官は学生の顔を凝視しているわけではなく、目線は胸元にあります。かっちりしたスーツの中から洗いざらしのよれよれのブラウスが見えていると、全体の印象が締まりません。カジュアルな装いには合っても、スーツには不向きです。衿にアイロンをかけるくらいの気遣いは持ちたいものです。

最近の状況を踏まえると、リモート面接でも清潔感は重要です。画面越しでも、しっかりとした身だしなみを心掛けることが大切です。スーツがきちんとしていること、髪の毛が整っていることなど、小さな気遣いが大きな印象を与えます。清潔感を保つことで、面接官に好印象を与えましょう。

「普段着で来てください」の意味

企業が「普段着で来てください」と言う場合、相手は学生の感性や状況判断力を見ています。ファッションにこだわってヴィンテージものの穴あきジーンズを選ぶのは、適切ではないかもしれません。どんな状況かをきちんと認識し、違和感のない服装で出かけるのが基本です。

普段の通学着で十分ですが、もう少し気を使いたい場合は、ちょっと気合を入れた初デートくらいの感覚で装うのも良いかもしれません。こざっぱりとして清潔感があふれるものであれば問題ありません。最近の状況を踏まえ、リモート面接の場合も同様に、適度に整った普段着を選びましょう。清潔感があり、相手に好印象を与えることが大切です。

大学院生の就職活動

院生の採用基準について

「企業は学生の潜在能力で判断し採用する」とよく言われますが、それは間違いではありません。ただし、可能性で判断されるのは主に学部生までです。一般的に、給与ベースが院生と学部生では異なります。同じ新卒で入社する場合、院生の初任給は高く設定されています。それだけ企業が院生に対して高いレベルを期待しているということです。

企業が求める要素として、人柄が良く、意欲的な取り組みがあることは重要です。学部生であれば、業務に対する適性が判断されれば、内定に直結することが多いでしょう。しかし、院生は少し異なります。ビジネスはボランティア活動ではなく、しっかり利益を上げ、株主や社員に還元する必要があります。院生の給与が高いということは、それだけの働きを期待されているということです。

人柄が良く、意欲的であっても、大学院での研究がどうビジネスに活かせるかを明確に提示できなければ、「残念ながら縁がありませんでした」という結果になってしまいます。これまで培ってきたものがどのようにビジネスに活かされるかをしっかりアピールし、面接官を納得させることが重要です。

学部での就職活動に納得できなかったため、緊急避難的に大学院に進学したという甘い判断は、就職活動において命取りになることがあります。この点を肝に銘じておくべきです。

最近の状況を踏まえ、大学院生は研究の成果や専門性をどのようにビジネスに結びつけられるかを具体的に示すことが求められています。企業の期待に応えるために、自分の強みを最大限にアピールしましょう。