自己分析って何?
例えば、海で波と戯れようと思って飛び乗った電車が高原に向かう電車だったら、楽しみにしていた計画が台無しになります。就職活動も同じです。自分の生き方に合わない職場に就職すると、ストレスが溜まってしまい、健康を害するかもしれませんし、退職に至ることもあります。新卒入社者の3割が3年以内に退職するという社会問題もありますが、これらの多くは「電車の乗り違え」に相当します。このような悲しい出来事を避けるためにも、まずは自分が楽しい人生をどう過ごしたいかを考えてみることが重要です。少なくとも20代をどう過ごすか考えることが、自己分析の一番のポイントです。
また、「就職活動は商談である」という事実を認識することも大切です。就職活動は、自分という唯一無二の商品を納得できる企業に売り込む作業です。八百屋や魚屋のように品数が豊富ではなく、単品での商売ですので、丸ごと買ってもらわなければなりません。お客様(企業)が何を考え、何を求めているかを理解し、その商品価値をアピールしなければ、商談は成立しません。就職活動はビジネス活動の前哨戦とも言われる所以です。
自己分析がなぜ必要か? 人事担当者は、自社にぴったり合う学生かどうかを判断するために、さまざまな質問を用意しています。一見、多様に思える質問も、根底にあるのは「あなたはどういう学生ですか?」という問いです。
普段の学生生活で自分の軸がしっかりしていて、言動にブレがなければ、改めて自己分析をする必要はありません。自分の本質を素直に伝え、それが相手企業に合うかどうかを判断してもらえば良いのです。しかし、自分軸を持っている学生は少なく、言動にブレがあり、言っていることと行動が一致しないことが多いです。
例えば、「学生時代に語学研修などの新しい機会に挑戦し、無鉄砲に飛び込んだ経験から、国際人になるためには英語や外国文化の勉強だけでなく、現地に行き、話し、感じることが重要だと学びました」とアピールしながら、他の質問では「国際人になるという目標を持ちながらも、臆病で相手を理解できなかったことを反省し、笑顔を忘れず、相手の話をよく聞き、自分から話しかけるように努めたことで信頼関係を築けました」と語ると、どちらが本当のあなたなのかと人事担当者は混乱してしまいます。このような矛盾をなくすためにも、しっかりと自己分析を行うことが重要です。
どうやって自己分析するの? 就職活動でブレのない商談を進めるためには、しっかりと自分の本質(自分軸)を見極めることです。難しい分析をするわけではありません。心に深く刻まれた体験を顕在化させ、整理することが大切です。
まずは、記憶に残っているエピソードを思いつくままにメモしましょう。嬉しかったこと、楽しかったこと、辛かったこと、悔しかったこと、失敗して大恥をかいたことなど、何でもメモしておくことが大切です。机にかじりついてひねり出す必要はありません。リラックスしているときや、お風呂でのんびりしているときに頭に浮かんだエピソードを書き留めておきましょう。それらのエピソードは心の奥深くに刻まれているので、思い出すとその時点にタイムスリップすることができ、エピソードのきっかけから経緯まで生々しく思い出されるはずです。
これらのエピソードに対して「どこに感動したのだろうか」「どうしてこんなに悔しいのか」と自分の胸の内に問いかけてみると、自分の考え方や感じ方といった本質が浮かび上がってきます。こうなれば自己分析は完了です。
自己分析をどう活かすの? 「企業は何を求めているのか」を理解することが重要です。企業は、学生の「人間性」と「思考回路」で自社に合う人材かどうかを判断しています。人間性とは、学生の人柄や感性であり、職場の風土に溶け込めるかどうかをチェックしています。どんなに有能な人材でも、職場環境に合わないと採用できません。
思考回路とは、物事に対する取り組み方やその処理の仕方を見ています。自己分析でピックアップしたエピソードを材料にして、人事担当者に「私はこういう感性の持ち主です」とか「私はこういう取り組みができます」と売り込むことが大切です。
自己分析の具体的な方法
人間性をアピールする
「明るさ」 業務が忙しくなると、神経が張り詰め、疲れがたまるものです。そういうときに、屈託のない笑顔やきびきびした態度に接すると、職場にホッとした空気が流れます。明るさは職場の活性剤です。具体的なエピソードを交えて、どのような状況で周囲を和ませたかを説明すると良いでしょう。
「向上心」 向上心をアピールする場合、何かに挑戦した話が多いです。例えば、「英語のスコアを上げるために努力した結果、目標を達成した」といった具体的なエピソードとその動機を説明すると、より説得力があります。
「好奇心」 好奇心は物事の発想の原点です。普段の生活の中で感じた疑問や興味をエピソードとして取り上げ、どう感じ、どう行動したかを説明すると、好奇心の強さが伝わります。
「誠実さ」 誠実さをアピールする場合、具体的なエピソードとその背景にある意志を説明すると良いでしょう。例えば、「無遅刻を維持するために日常生活でどのような努力をしていたか」を具体的に示すことで、誠実さが伝わります。
「思いやり」 思いやりをアピールする場合、自分がどのような体験を通して思いやりの心を育んだかを説明します。具体的なエピソードとその時の感動や感激を伝えることで、思いやりの心が伝わります。
思考回路をアピールする
「協調性」 協調性をアピールする場合、共通の目標に向かって協力するポイントを説明します。具体的なエピソードを通して、どのように協力し合ったかを説明すると良いでしょう。
「忍耐力」 忍耐力をアピールする場合、我慢強さだけでなく、その時の考え方や後の処理の仕方を説明します。具体的なエピソードとその背景を説明することで、忍耐力が伝わります。
「発想力」 発想力をアピールする場合、イメージや考えを表現する方法を説明します。トラブル発生時の対応やプレゼンテーション能力を具体的なエピソードを通して説明すると良いでしょう。
「行動力」 行動力をアピールする場合、アイデアや発想を具現化する力を説明します。具体的なエピソードとそのプロセスを説明することで、行動力が伝わります。
「指導力」 指導力をアピールする場合、リーダーシップを発揮したエピソードを説明します。具体的な取り組みやその背景を説明することで、指導力が伝わります。
自己分析を通じて、これらの要素を明確にすることが大切です。以下は、さらに具体的な自己分析の方法とその活かし方についての詳細です。
自己分析の進め方
自己分析のステップ
- エピソードの収集:まず、自分の過去の体験を思い出し、嬉しかったこと、辛かったこと、悔しかったことなど、心に残るエピソードをリストアップします。具体的な出来事を細かくメモしましょう。
- 感情の分析:そのエピソードに対して、どのような感情を抱いたかを振り返ります。何に感動し、何に悔しさを感じたのか、自分の胸の内を深掘りします。
- 自己の特徴を抽出:リストアップしたエピソードから、自分の特徴や強み、弱みを抽出します。自分の価値観や信念がどのように形成されたのかを考えます。
- パターンの発見:複数のエピソードを通して、共通するパターンや傾向を見つけ出します。これにより、自分の行動や思考の傾向を理解します。
- 自己PRの整理:抽出した特徴を基に、エントリーシートや面接で使える自己PRを整理します。具体的なエピソードを交えて、自分の強みや人間性をアピールするためのストーリーを構築します。
自己分析の活かし方
エントリーシートの記述
エントリーシートは、自己分析の結果を反映するための重要なツールです。以下のポイントに注意して記述します。
- 具体的なエピソードを盛り込む:自己PRや志望動機に具体的なエピソードを取り入れることで、信憑性と説得力が増します。単なる事実の羅列ではなく、その背景や動機、感じたことを詳しく説明します。
- 一貫性を保つ:エントリーシート全体で、一貫したメッセージを伝えることが大切です。自己分析を通じて得た自分の本質や価値観を一貫して表現します。
- 企業とのマッチングを意識する:企業が求める人材像や企業文化に自分がどのように合致するかを具体的に示します。自分の特性が企業にどのように貢献できるかを明確に伝えることが重要です。
面接でのアピール
面接では、自己分析で得た結果を効果的にアピールするために以下の点に注意します。
- 自然体で話す:自己分析を通じて得た自分の本質を自然体で話すことが大切です。無理に飾らず、素直な気持ちを伝えます。
- 具体的な事例を使う:面接でも具体的なエピソードを使って自分の特性を説明します。エピソードを通じて、自分の人間性や思考回路を具体的に伝えます。
- 質問に対する準備:自己分析を通じて得た自分の強みや弱み、価値観を基に、予想される質問に対する準備をしておきます。どのような質問にも自信を持って答えられるように準備します。
自己分析は、就職活動において非常に重要なプロセスです。自分を深く理解し、その理解を基にエントリーシートや面接で自分を効果的にアピールすることが、成功への鍵となります。自己分析を通じて、自分の強みや特徴を明確にし、就職活動を進めていきましょう。