エントリーシートの中で、人事担当者が最も注目するのが「自己PR」です。しかし、実際に目を通していると「これは少し勘違いしているのでは?」と思う内容も少なくありません。

単に「自己PR」と言えば、自分の得意な話や体験談を自由に書いても問題ないでしょう。ですが、就職活動における自己PRは違います。 読み手である人事担当者にとって、あなたの本質や素顔を見極めるための判断材料にならなければ意味がありません。ところが、多くのエントリーシートには、この根本的な意識が欠けていることがあります。


抽象的すぎる自己PRは伝わらない

よく見かける文章に、
「私は何事も全力を尽くし、結果を出すことで周囲から信頼を得ました」
「私はさまざまな体験から目標を定め、努力することで達成してきました」
といったものがあります。

確かに立派ですが、抽象的すぎて具体的なイメージが湧きません。結果として「すごい学生だな」で終わってしまい、印象に残らないのです。


本当の強みはプロセスにある

人事担当者が知りたいのは、あなたがどう考え、どう乗り越えてきたのかです。

何事も最初から順調に進むわけではありません。考え、迷い、失敗しそうになりながらも、奮起して成し遂げる――その過程にこそ、あなたの強みや学びがあります。

人事担当者は、そうした人間らしさや熱い思いに心を動かされます。上手く飾った言葉よりも、リアルなプロセスを誠実に伝えることが大切です。


成功例と失敗例

失敗例(抽象的すぎる自己PR)

「私は常に全力で努力し、成果を出してきました。その結果、周囲から信頼される存在になりました。」

👉 悪くはありませんが、「どんな状況で」「どう努力し」「どんな成果を得たのか」が見えません。具体性がなく、読み手の記憶に残りにくい文章です。


成功例(プロセスを語った自己PR)

「私は飲食店でのアルバイトを通して、課題解決力を磨きました。繁忙期には注文ミスが多発し、スタッフ全員が疲弊していました。そこで私は、注文内容を可視化できるチェックリストを作成し、共有のルールを提案しました。最初は周囲に受け入れられませんでしたが、粘り強く説明し実際に運用した結果、ミスが大幅に減り、店舗の雰囲気も改善しました。この経験を通して、“課題を発見し、工夫して改善につなげる力”を身につけたと考えています。」

👉 プロセス(課題 → 工夫 → 結果 → 学び)が明確で、人事担当者がイメージしやすい内容です。学生の「考え方」や「姿勢」が伝わり、人物像が浮かびます。


自己PRで伝えるべきポイント

自己PRで大切なのは、

  • どのように取り組み、結果を出したのか
  • 目標に向かってどんな道筋を立てたのか
  • そこから何を学び、今後どう生かしたいのか

この流れを意識するだけで、抽象的な言葉が具体的で説得力のある自己PRに変わります。


自己PRは「立派な成果」を誇る場ではなく、自分らしい成長や姿勢を誠実に伝える場です。等身大の言葉で、あなたが経験をどう受け止め、どう成長につなげたのかを語ってください。その誠実さこそが、読む人の心を動かします。

自信を持って、自分の言葉で伝えていきましょう。きっとあなたの魅力は伝わります。


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