設問によっては「卒論のテーマ」や「重点を置いた科目」といった形で質問されることがあります。つまり、学業においてどんなことに力を入れてきたか、または現在力を入れているかを問われているのです。
人事担当者が知りたいのは、ただの研究タイトルではありません。
「なぜその研究に興味をもったのか」「研究を通して何を学んだのか」といった背景から、あなたの考え方や取り組み方を見極めたいのです。
エントリーシートは、面談前に提出する最初の接点です。まだお互いを知らない段階だからこそ、研究に取り組む動機や心の動きを盛り込むことが大切です。難しい言葉や格好のよいテーマを並べる必要はありません。「私は普段から◯◯に関心があり、それをもっと深く掘り下げたいと思い△△を研究しています」と、素直に自分の言葉で書けば十分に伝わります。
注意したいポイント
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専門的すぎる表現に偏らないこと
難解な理論名を羅列しても、人事担当者が理解できなければ「よく分からないけれど立派そうだな」で終わってしまいます。大切なのはテーマの難しさではなく、そこから何を考え、どう学んでいるかです。 -
過去形ではなく進行形で表現すること
研究や学びは学生の本業です。「〜を学びました」と完結させるのではなく、「〜について現在も研究を進めています」と書くことで、面接で突っ込まれても「今まさに学んでいるところです」と柔軟に対応できます。
記述例
例1:社会学系
「私は普段から地域社会の人間関係に関心があり、その背景をもっと深く理解したいと思い、卒論では『地方都市における高齢者の交流拠点の役割』について研究しています。現在は、地域の集会所で行われている活動に参加しながら、参加者へのインタビューを通してデータを集めています。この研究を通じて、“人が集まる場が心の支えになる”という気づきを得ており、引き続き実態を掘り下げていきたいと考えています。」
👉 ポイント:難しい言葉を避け、動機・方法・学びをバランスよく示している。
例2:理工系
「私は子どもの頃からものづくりに関心があり、それを学問的に探究したいと考えて、『再生可能エネルギーの効率的な発電方法』をテーマに研究しています。現在は、風力発電の羽根の形状による発電効率の違いを実験的に検証している段階です。この取り組みを通して、理論だけでなく“試行錯誤しながら改善を積み重ねる姿勢”が研究には欠かせないと実感しています。」
👉 ポイント:専門性があっても平易な言葉で説明し、読み手に分かりやすい。
例3:文学・語学系
「私はもともと海外文化に強い関心があり、言語を通してその背景を知りたいと考えました。卒論では『現代日本における英語スラングの受容』をテーマに研究しています。SNS上の表現を収集し、その広がり方を分析している最中です。この研究を進めるなかで、“言葉は社会の変化を敏感に映し出すものだ”と感じており、今後も観察を続けていきたいと思っています。」
👉 ポイント:テーマが身近であり、日常的な関心から研究につながっているのが伝わる。
研究課題は「立派さ」を競う場ではなく、あなたが何に関心を持ち、どう考えて取り組んでいるかを伝える場です。研究の動機や学びを素直に表現することで、十分にアピールになります。
「難しいことは書けない」と不安に思う必要はありません。むしろ、自分の言葉で今の取り組みを伝えることこそ、人事担当者の心に響きます。自信を持って、自分の研究を語ってください。
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