「志望動機」とは、本来その企業を志望する理由を記すものです。ところが実際のエントリーシートでは、業界全体の志望理由になってしまっているケースが多く見られます。つまり、同業他社にそのまま提出しても違和感がない文章になってしまい、「この企業でなければならない」という理由が弱くなっているのです。これが「志望動機が甘い」と指摘される最大の原因です。


志望動機は「その企業だからこそ」であること

環境問題や国際性への関心など、大きなテーマを志望理由にすることは素晴らしいことです。しかし、それだけでは業界全体の話にとどまってしまい、個別の企業を選んだ理由としては弱くなりがちです。

たとえば、身近な例から動機を語るのも有効です。隣に住む方が志望企業に勤めており、その日常の生活を通じて働き方に共感した――こうしたエピソードも立派な志望動機になります。自分の肌で感じた実感をもとにした理由は、説得力があり、読み手の心に残りやすいのです。


決意表明としての志望動機

志望動機は、エントリーシートの中で「その企業に入社したい」という決意表明でもあります。だからこそ、企業HPや入社案内に書かれている理念や戦略をつなぎ合わせただけの文章では、採用担当者には響きません。

実際の業務を体験していない段階で、企業理念や経営戦略だけを動機にするよりも、自分の目や耳で感じたことを動機にした方が熱意は伝わりやすくなります。


OB・OG訪問で実感を得る

志望動機に説得力を持たせるには、OB・OG訪問が大きな力になります。実際に働いている先輩の話を聞くことで、業務の魅力や組織の雰囲気を肌で感じられるからです。その経験を踏まえて「この人たちと一緒に働きたい」と思えたなら、その気持ちは強い志望動機となり、他の学生には真似できないあなたならではの熱意として伝わるでしょう。


成功例と失敗例

失敗例(NGな志望動機)

「私は環境問題に関心があり、貴社の事業は環境に貢献していると考えて志望しました。」

👉 これは一見悪くないように見えますが、環境に取り組む企業であればどこにでも通用してしまいます。「なぜその会社なのか」が伝わらず、差別化ができません。


成功例(良い志望動機①:身近な体験をきっかけに)

「私が貴社を志望した理由は、地域で開催された貴社主催のイベントに参加し、社員の方々が子どもから高齢者まで笑顔にしていた姿を目にしたことがきっかけです。その経験から、商品やサービスを通じて社会に安心と喜びを届ける貴社の姿勢に共感しました。私もその一員として、人々の暮らしに寄り添う仕事に挑戦したいと考えています。」

👉 「体験」から動機が生まれているため、具体性があり、志望度の高さが伝わります。


成功例(良い志望動機②:OB・OG訪問の経験を踏まえて)

「OB訪問でお話を伺った際、若手社員であっても責任ある業務を任され、挑戦できる環境があることを知りました。私も早い段階から責任を持ち、自ら考えて行動することで成長したいと考えており、その環境を整えている貴社に強く魅力を感じています。」

👉 訪問経験を踏まえて具体的に書いているため、同業他社との差別化が明確です。


成功例(良い志望動機③:企業の強みと自分の思いをリンクさせる)

「私は大学時代に海外留学を経験し、異なる文化を理解し合うことの大切さを実感しました。貴社はグローバル展開に力を入れ、現地のニーズに合わせたサービスを提供されています。私もその中で多様な価値観を尊重しながら貢献したいと考え、志望いたしました。」

👉 自分の経験(留学)と企業の特長(グローバル展開)を結びつけているため、納得感のある志望動機になります。


志望動機は「なぜその企業なのか」を自分の言葉で伝えることが大切です。

  • 大きなテーマ(環境・国際性など)だけでは業界志望に見えてしまう
  • 身近な体験や実際の出会いをきっかけにすると説得力が増す
  • OB・OG訪問で感じたことを交えると独自性が出る

この3つを意識すれば、読み手の心に響く志望動機になります。


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