「入社したら何がしたいか」という設問に対して、多くの学生が「自分に何ができるのか」「どう書けばよいのか分からない」と頭を悩ませています。確かに、曖昧なままではいい加減な記述になってしまうため、不安に思うのは自然なことです。
もちろん、明確な目的意識を持っていることに越したことはありません。ただし、大学や学部を選んだ理由が必ずしも将来像と直結していない学生も多く、その段階で完璧な未来像を描くのは難しいことです。大事なのは、将来を見据える意識を持ち、誠実に自分の考えを伝えることなのです。
人事担当者が知りたいこと
人事担当者は、この質問を通して**学生の生き方(自分軸)**を知りたいと考えています。
- 何をよりどころに考え、行動しているのか
- どんな価値観を持ち、どのように成長していきたいのか
つまり、企業が知りたいのは「立派な将来像」ではなく、あなたの姿勢や考え方です。
たとえ研究テーマが直接ビジネスに結びつかなくても、課題とどう向き合い、どう工夫して取り組んだかという姿勢は社会人になってからも必ず役立ちます。
学業以外に注力していた場合
「学業に集中できなかった」という学生もいるかもしれません。そんなときでも、企業研究を進める中で「社員の姿勢に共感した」「現場の仕事内容に興味を持った」など、心を動かされた経験はあるはずです。
その気持ちを素直に言葉にし、
「実務経験がないのでできるかどうかは分からないが、ぜひ挑戦したい」
と伝えることで、誠実さと前向きな姿勢を示すことができます。
成功例と失敗例
失敗例(NGな書き方)
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「入社したら御社で活躍したいです。」
👉 漠然としすぎており、何をしたいのか、どんな姿勢で取り組むのかが全く伝わりません。 -
「特にやりたいことはありませんが、与えられた仕事を頑張ります。」
👉 正直ですが、意欲や自分軸が感じられず、マイナス評価につながる可能性が高いです。
成功例(良い書き方①:研究経験を活かす)
「大学では情報処理の研究に取り組みました。入社後は、その経験を活かしてシステム開発に挑戦したいと考えています。特に、研究を進める中で課題に直面した際、仲間と議論しながら解決策を見つけ出すプロセスに大きなやりがいを感じました。その経験を活かし、入社後もチームで成果を出せる人材を目指したいです。」
👉 研究テーマ自体ではなく、取り組み方や姿勢をアピールしている点が評価されます。
成功例(良い書き方②:実務経験がないからこその挑戦意欲)
「営業職の経験はありませんが、OB訪問を通じて社員の方の姿を見て『自分もお客様に信頼される存在になりたい』と思いました。まだ力不足かもしれませんが、挑戦しながら学び、少しずつ成果を出せるよう努力していきたいです。」
👉 実務経験がないことを正直に認めつつ、挑戦する意欲と学ぶ姿勢を示しているため、誠実さが伝わります。
成功例(良い書き方③:企業研究から得た関心を軸にする)
「貴社の海外展開について調べる中で、現地の文化を尊重しながら事業を進めている点に強く惹かれました。入社後は、まず国内業務で基礎を学び、その後は海外事業にも関わりたいと考えています。言語や文化の壁を乗り越えて挑戦することで、自分を大きく成長させたいです。」
👉 企業研究を通じて感じたことを出発点にしているため、「なぜこの企業で働きたいか」が具体的に伝わります。
「入社したら何がしたいか」は、立派な将来像を描くことではなく、自分の価値観や姿勢を誠実に伝えることが求められています。
- 曖昧な表現や他社でも通用する文章はNG
- 研究・経験から得た姿勢を語ると説得力が増す
- 実務経験がなくても「挑戦意欲」を示せばOK
前向きな姿勢を自分の言葉で伝えることが、最も強いアピールになります。
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